慶應義塾大学大学院経営管理研究科 Executive MBA (EMBA) コース同窓会のホームページです。
2025年11月18日、新設された慶應義塾大学三田キャンパス北別館内KBS教室内で、第34回 EMBA Caféを開催いたしました。
天ぷら専門店「新宿つな八」を展開する株式会社綱八 代表取締役であり、三代目として創業100年企業のかじ取りを担っておられる志村久弥(しむらひさや)様をお迎えし、「三代目の経営論 - 『守る』と『攻める』で創業100年をつなぐ ~つな八に学ぶ伝統と革新の実装~」と題してご講演を頂きました。
志村様は、慶應義塾大学商学部ご出身で体育会ハンドボール部に所属され、39歳で綱八三代目社長に就任されました。創業大正13年、レストラン23店舗・デリカ3店舗、従業員約530名、年商約32億円へと成長してきた同社の歩みを、4つのステージに分けながらファミリービジネスとしてどのように「家業」と「企業」のバランスをとってきたのかを、具体的なエピソードとともにお話し頂きました。
第一ステージ:祖父の代(戦前・戦後復興期)
第二ステージ:父の代(高度成長・多店舗展開期)
第三ステージ:ご自身の代(バブル崩壊後の停滞期・平成不況)
第四ステージ:ご子息の世代(価値観の多様化・事業承継期)
講演の中核となったのは、綱八のモットーである「伝統は革新の連続なり」という言葉です。祖父・父から受け継いだ「職人の世界」「天ぷらへのこだわり」「家業としての誇り」といった“変えてはいけないもの”を守りつつ、一方で、クレド(※1)の策定、評価制度や育成システムの導入、調理マニュアルや動画教材の整備など、“企業として変えていくべきもの”に、三代目としてどのように革新を続けてきたのかについて紹介されました。
また、戦後の焼け野原からの復興、東京オリンピックと新宿ステーションビル(当時、現ルミネエスト新宿)開業による多店舗化、バブルとその崩壊、東日本大震災、そしてコロナ禍という、創業100年の歴史において綱八は様々な「転換期」に直面されてきました。それらの局面をどう乗り越え、成長を続けてきたのか、豊富なご経験をお話して頂きました。
現在取り組まれている本店建替えプロジェクトや、四代目への事業承継のあり方、「今まさに進行中」のテーマにも踏み込んだお話が続きました。
その後、ファミリービジネスにおける“血族”と“プロフェッショナル経営”の線引きといった、多岐にわたる質問が投げかけられました。志村様は、ご自身のご経験も含めたリアルなエピソードを交えながら、ひとつひとつ丁寧にご回答いただき、会場は終始和やかながらも熱のこもった雰囲気に包まれました。
会場では、つな八の天ぷら弁当をみなさんで頂きながら、ご講演を拝聴しました。「幸せは胃の中にある」このような感覚は内面的な部分から湧き上がるものではないかと志村社長のお話から感じました。「持続的な幸福感」は現代の不確実性の世の中で求められるものではないかと思います。
今回のEMBA Caféは、ファミリービジネス、事業承継、店舗ビジネス、サービス業などに関心を持つ参加者にとって、教科書では得られない「現場からの経営論」に触れる貴重な機会となりました。本企画は、Executive MBAプログラムの同窓生によるネットワークである「EMBA三田会」が中心となって企画・運営したものであり、今後も「今、KBSの仲間と一緒に聞きたいリーダー」をお招きしながら、学びとネットワーキングの場を広げていく予定です。
※1: クレド(Credo)とは「信条」「志」「約束」を意味するラテン語で、企業活動の拠り所となる価値観や行動規範を簡潔に表現した文言、あるいはそれを記したツールを指します。


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